2013年12月29日日曜日

2003年9月21日

ぷファ?っ、あ゛?、疲れた・・・。

久しぶりでござんす。

色々あって、いっそがしくて、

皆さんがきっと夜も眠れずに待っていてくれる

僕の文才溢れる「ひとりごと」の第2弾が書けなくて、本当にごめんね。

どうやら寝不足で調子狂っちゃった人も中にはいる、と風の便りで聞いたよ。

なんちゃって。

僕ね、色々あってね。

僕が、と言うより、ご主人さまの世話で、僕はモー大変だったんだから。

実はね、ご主人さまのピアノの恩師の

アンナ・シュタードゥラー先生が6月21日に亡くなったんだ。

81歳でね。

ご主人さまったら、最初は何だか変な感じだったよ。

端で見ていて、我慢している、と言うか。

思いっきり泣いてしまった方がいいのにさ、気丈に振る舞っていてね。

そうかと思えば、どうでもいいような内容の話の時に、

急にポロポロと涙を零したりで。

こりゃあ、おいらの出番だい!と張り切って

ご主人様の面倒を見たのさ。

まあ、ベビー・シッターみたいな事をして励ましたんだよ。

だって、ご主人さまが頼れる力強い肩と言えば、

僕じゃないかい?

えっ、今「そのほっそい肩で?」なんてヤジ飛ばしたのは誰だい?

人が、いや、犬が折角いい所見せようとしてるのに・・・。

いいさ、僕は僕だから。

僕が、このコーナーの「ひとりごと」第1号を書いた7月半ばは、

ご主人さまはまだ毎日明け方まで眠れなかったようで、

後は努めて普段通りに振る舞っていたけれども、

それからが大変だった。僕がね。

だって、本当はご主人さまが僕のお世話をする筈なのに、

その可愛い僕が世話をしてやったのさ。

世の中あべこべだよね。

江戸っ子は一心太助の如く、

「てえへんだっ、てえへんだ〜い!」と叫び乍ら、

まるでマンホールにストーンと落ちちゃったみたいに

落ち込んでいたご主人さまが明るくなるように励まし続けたのさ。

どうやって?

マッカセナサ〜イ、

僕のチャーミングなシルエット

(胴長って言わないでね、タイミングがまずいから。

そういう細かい事を言っちゃあ、おしめえよぅ・・・)と

円らな瞳(まったくもう!円らだよ、潰れてる瞳じゃないよ!)で

先ずはご主人さまのハートに総攻撃を仕掛けるんだ。

一度みつめたら二度と目を反らす事のできない

僕自慢の100万馬力(そうだよっ、馬力だよっ。

だって100万ボルトは古い、古い。

僕は電気ウナギじゃないし。

ねえ、お願いだからさ、馬力って表現している健気な僕を思いやって、

「ば・カ」と読まないで、「ば・りき」にしといてくんろ・・・)

の瞳の威力でご主人さまの悲しさをなぎ倒し、

一度なめ始めたら1時間でもなめ続ける

僕の真心でご主人さまの前足、あ、手・・・ね、

そう、手を丹念に撫でてあげるんだ。

そうだよ、僕らは手で撫でないんだよ、舌で撫でるんだからね。

そうするとね、僕がいる事にやっと気が付くのか、目を見てくれるんだ。

いつもだったらジャレ返してくる筈なんだけど、

そうとう元気がなかったからな?。

最終攻撃は、ひっくり返ってお腹丸出しポーズで、

お腹を撫でて貰うおねだりをする。

恥ずかしくないかって?

まさか。僕らは犬なんだ。純粋なんだからね。

人間みたいに、荒んでばっちくなっちゃった想像力なんて、

まるっきりないんだよ。エヘヘッ。

親を亡くすと、誰でも暫くは心が萎れるんだね。

シュタードゥラー先生は、ご主人さまにとって、

恩師だけでなく、もう一人の母親でもあったからね。

僕なんか、子犬の頃に別れを告げた母犬が、

今どうしているのか、

或いは死んじゃっても、それを知る由もないんだよな。

だから、ご主人さまは、まだラッキーなんだなぁ。

そんなこんなで、もの凄く多忙な夏を過ごしたウィリスさまじゃった。

わかるでしょ、我ながら疲れちゃったのさ。

でもヘトヘトのままじゃあ、僕じゃない。

今では少しづつ元気を取り戻したご主人さまをコキ使って、

僕がエサより大好きなボール遊びの相手をやらせているんだ。

子犬の頃から愛用し続けている小さめのボール。

人間達は、それと同じ種類のボールを、大き目のハエ叩きで、

何故か水のない空中に仕掛けている網の上を飛ぶように、

叩き返し合っているんだ。

そして沢山の人間が、ボールに対する暴力の連続を横から眺めていて、

ボールが飛ぶ方向に併せて首を右から左、左から右へと、

飽きることなく回し続けるんだよ。

たぶん、その人達がうまく首の体操ができるように、

網の近くの人がボールを飛ばして合図しているんではないか、と僕は思う。

こういう時の人間は、なんとも真面目だから感心するなぁ。

僕、観察力、鋭いでしょ?

ご主人さまもすっかり元の変てこりんな、

だからこそ僕にぴったりなご主人さまに戻った。

先生のお位牌を作るんだから、と嬉しそうに話してもくれた。

先週は、3日間続けて日中何処かへ出掛けていた。

帰ってくると、嫌にご機嫌なご主人さまであった。

心配だ、もしや、誰かとデート???

あの、ご主人さまが?まっさかー。

だって、日本じゃ絶対に誰も欲しがらないよな、

あんな、え?、あ?、いえ、その、(モジモジ・・・)

勿論、「あんな 素晴らしい・」と言うつもりだったんだよ。

ねぇ、本当だよ、わー、ご主人さまに言わないで、お願い!

あとが恐いから・・・

後生だから!

ムッフフ。

僕さまの見込み通り、やっぱりデートなんかじゃなかったよ。

ウックック。

あの笑顔の秘密はね、

行ってきたリハーサルがすっごく楽しかったんだって。

ヨーロッパはハンガリーという国からきた

弦楽器奏者の4人組が素晴らしいって。

ハンガリーの首都の名前が付いている、

新ブダペスト弦楽四重奏団、という人達だ。

以前も日本の佐賀市でブラームスのピアノ五重奏曲を

一緒に演奏させて貰えたんだよね。

その時も、ご主人さまったら、ハッピーで、

あんなに素晴らしい音楽と響の持ち主と弾かせて頂けるなんて幸せ?、

と感激のあまり、はしゃいでいたなぁ。

今回も、今週の日曜日の9月28日に、

一度は散歩に連れていってもらいたい上野公園

(犬はダメなの?えーっ、そんなー)

の東京文化会館のリサイタルホール

(あ、そう、日本では小ホールって言うのかぁ)

で彼等の演奏会があってね。

前半はモーツァルトとメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲が聴けて、

後半でフランスのヴィドールという作曲家

(フランスものだけど、ロマン派時代の人だよ)

のピアノ五重奏曲をご一緒させて貰えるんだって。

ラッキーなご主人さまだ。

彼等の素敵な音楽をみんなに聴いてもらいたい、と

ご主人さまは一生懸命に僕に語ってくれる。

彼等が奏でるヨーロッパの音は、空気と光が溢れている。

そして彼等の素晴らしい音楽・・・、

弦の本当の音色。

ああ、僕も盲導犬だったら聴きにいけるのになぁ。

ただの番犬で、かなり損したよ。

文化や芸術に高い感心と、

犬でありながら音楽面では頗る教養の持ち主である僕には、

痛い現実である。

そう、みんなは考えた事はないと思うけど、

僕は、ご主人さまの奏でるツィーグラー奏法で育ったんだよ。

子犬の時から、ご主人様がピアノを練習する時、

ご主人様の足元に置かれた小さな篭の中で、僕はお昼寝をしていた。

まんまるくなって熟睡していて、可愛かったんだって

(可愛「かった」、とは何?過去型じゃないかい?)。

だから今でも、ご主人さまが練習に没頭すると、

本当は僕も同じ部屋に居たいんだ。

だって、ご主人さまのピアノのイスの真下で寝る為なんだ。

ご主人さまが弾き始めると、すぐに寝てしまうんだよ。

育ち盛りの頃だって、今の今までボールで遊んでいた僕が、

「遊んでー」とご主人さまの膝に鼻でツン、ツンとねだっている最中でも、

ピアノがご主人さまに語り始めると、

みるみる内に僕は夢の世界へ消えてゆく。

誰だよ、今「そりゃ、気絶したんじゃないのか?」なんて言うのは?

ひどいんじゃないか?

ま、いいや。

僕とご主人さまとの音楽の繋がりは、特別なものなんだから。

第三者には、ちょっと解らないかも・・・ね。

僕ら犬族は、かなり敏感なんだ。

聴覚や嗅覚の事等は有名だけど、

魂の敏感さは、かなりのものだよ。

僕もそうだけど、

シュタードゥラー先生が生前可愛がっていた歴代の犬達も、

ご主人さまが大曲のフォルティッシモの所を弾いている時でも、

グランドピアノの真下

(あそこに潜って、ピアノの響を聴いた事は、あるかい?

結構大きな音で共鳴するんだよ、ピアノの底は)で

スヤスヤと眠っていた。

でも、途中から先生の所へ習いに来ていて、

まだ音が堅かったりするお弟子さんが第一音を出すと、

先生のバーニーズ・マウンテンドッグ達は、

代が変っても必ずガバッ、と大きな体を慌ててピアノの下から避難させた。

フォルテの場所なんかは、より犬をスピードアップさせた。

これはシュタードゥラー先生が「興味深いでしょ?」、

とご主人さまにいつも話して下さった。

犬が音の違いに示した行動を

ご主人さまが実際に目撃した事もあるんだって。

そうなんだ。

ツィーグラー奏法で奏でる音楽は、

やはり犬の眠りには、とても心地よい奏法なんだよ。

だから好きだね。

え?

好きなのは、ご主人さまの事かって?

ウ〜ム、奏法だよ、奏法。 

ニャ〜ンちゃって。

僕ら一般犬

(警察犬、救助犬、盲導犬、聴導犬、介助犬達は特別だ。

彼等はヒーローだからね)にとっては、

エサと散歩、(ボール)遊び、

そして眠る事が忙しい毎日の欠かせない仕事だ。

仕事を全うする為には、多忙な犬が必要としている休日は、

一年のうち、ざっと365〜366日なのだ。

そして、雨の日も、風の日も、くる日もくる日も、

24時間のうち最低12時間は寝る事に励んでいるのだ。

スケジュールを簡単に言うと、

起床したらおばあちゃんの部屋の窓辺で朝日に当たる。

外へ出て日向ぼっこ、その後食べたと思ったら寝る。

起きたら遊ぶ。

寝たら又外へ。

帰ったら遊び、少し寝て食べる。

そして遊んで寝て、外へ急ぐ。

寝てから遊ぶ。

最後に外へ。

そして就寝。

寝る場所だって、状況に応じて変るんだよ。

暑い時は、冷んやりする階段室の1階か

階段の踊り場で寝乍ら待機する。

大好きなおばあちゃんの部屋へも何度も遊びに行って、

可愛がってもらって、寝る。

居間には、僕が人間家族全員の行動を把握できる場所に設置された

主寝室ならぬ主寝所があり、

昼夜の大半は詰めている僕の司令塔でもある。

ご主人さまの母親の部屋にも偵察に出かけるし。

ご主人さまのベッドの横の篭へも

夜中の3時や朝の8時に出張する事があるんだ。

留守番の時は、洗面所のバスマットをうまく丸めて寝床に仕立てる。

僕は柔らかい所が好みでね。

間違って台所の扉が少しでも開いていようものなら、

そこのキッチンマットだって

僕のクッションにされる運命から逃れられやしない。

いくつもの寝床を担当する僕は、

つまり仕事のできる犬・・・って事かな?

本当に忙しい毎日だ。

だからこそ、心地よい音環境が、任務に勤しむ犬に充実感を与えてくれる。

わかるかな? 

では、さらばじゃ。

次回も又、皆さんに会えるのを楽しみにしているウイちゃんより