2013年12月29日日曜日

2004年3月23日

旅烏のウイゴロウ・・・風に吹かれてどこへゆく・・・。

いやあ、ごめん、ごめん、ほんと、悪かった。

去年の11月中に僕のひとりごと第4弾を人間社会に突き付けたかった・・・、

じゃなくて、皆さんに恵んで差し上げよう、

いやはや、これは失礼、

え〜、ま、献上(大袈裟かい?胡麻擂り?・・・健康にいいのに・・・)

させて貰おう、な〜んて思っていたんだ。

こんなに永くご無沙汰するつもりじゃなかったんだよ。

ところが、犬としては色々と考えなければいけない事が起きたりして、

その現象を理解する為に、

まぁ、他でも同じなのか比べたかったし、

犬一匹(男一匹、なんて言うと、きっとクレームが来るから)

ウィリスは、愛車に跨がり旅に出た。

ハ〜レ〜と共に僕は風になり、・・・・

な〜あんてこたぁ、ありえねぇがな。

そう、いい所に目を付けてくれたなぁ、

僕の足の長さ

(えっ?短さ、が正しい表現だって?それを言っちゃぁおしめぇよぅ、な。)

じゃ、とてもじゃないが、ハーレーは無理だ。

うん。

自慢のジャンプ力で軽々と飛び乗れても、乗りこなせない。

足が届かない。

悲しい犬の容赦ない非運。

えっ?

そりゃぁ、足以外に前足だってハンドルまで届かないさな。

それに、ご主人様はバイクはあまり好きじゃないし。

そう、僕に何かあったら、てね。

事故の時、やっぱり2輪車のほうが車には負けるからね。

ハーレーに乗りたくても、

「そんなので、事故にでも巻き込まれて死んでしまう為に、

君を育てたんじゃないわよ」、

な〜んて反対されそうだなぁ。

とにかく、どのように旅に出たかは別として、

風を旅の道連れに、日本を少し周ることにした。

日本人についての調査と研究に乗り出した僕って、もしかして天災?

と言うか、天才だったりして。

そうだよ、

「日本人の価値観、習慣と文化の変化に伴う社会的現象の多様化」を

総合的に犬(検)証したいと思ったから。

その結果をこのタイトルの博士論文にまとめたリして。

今、何て言ったの?

犬のクセに可笑しいだって?

そうかも知れないね、

だって犬も唯の人間に過ぎないもんね。

日本へ来てから早4年が過ぎ、梅雨入り前には5年となる。

でも、まだ日本生活の中での大きな謎が数々あって、

僕の洞察能力を刺激するんだ。

「洞察してくれ〜、謎を解いてくれ〜」

と僕に呼び掛けてくるんだ。

僕は犬だから、鼻が効く。

ご主人さまは「君の自意識も大したものだわ」、

と誉めてくれているんだ。

クックック。

そうだよ、

彼女は「我が家の中では君が一番素晴らしい犬だものね」

と御墨付きまでくれるんだ。

それは皮肉だって?

いーや、これをユーモア、と言うんだよ。

さて、僕が目にしたり、耳にした事柄が、

果たして地域限定、或いは人物限定の現象なのかを、

旅をしながら探ってみよう。

日本は学校等での虐めが多いと思った。

ドイツだって充分あるよ。

でも、だからと言って社会現象になっていないよ。

人間の大人達が大騒ぎしたり、

社会問題として報道で取り上げられたり、

先生達や友達が干渉しないなんて事はないんだよ。

なんでだろう。

僕は、虐められて自ら命を絶ったり、

命を奪われたりする子が日本ではいる、とニュースで効くと、

心の中で男泣きをするんだよ。

どうしてそんな悲劇があり得るんだろう、って。

残酷さにブレーキがかからない人間がわからないよ。

ご主人様は、そういう時どうしていたっけな。

虐められるからって、

黙っていちゃダメなんじゃないかな、と僕は思うんだ。

でないと人間はエスカレートしやすい生き物だから、危ないんだ。

犬社会では、心無い人間の手によってダメにされていなければ、

どの犬も、喧嘩相手が降参する為に喉とお腹を見せたら、

血の気がおさまるのに。

人間の場合、どうも我慢していくだけではおさまらないようだね。

面と向かって意見を言っていく事が大事ではないかな。

僕のご主人さまだって、日本人って事だけで結構いい的だったんだよ。

でもね、日本で言う小学6年生のある日、

クラスの男の子とチャンバラ

(双方、長いプラスチック製の物差を使用、

何故なら、体力勝負では女の子にはハンディキャップがあるから、

両方がフェアーに戦える方法を取ったってわけだね。)

で決着をつけた事もあったんだって。

教室で、科目毎の先生が入れ代わる5分間でね。

結果は?

フフッ、小さい時から時代劇が好きだったご主人様の事だからね。

例の男の子は、その日からご主人様に普通に接するようになったんだ。

そう、別に負けたからって恨むでもなし、勿論言葉も交わしたんだ。

ある意味認めたんだろうな。

男の子の方がサッパリしているのかなぁ。

又、中学1年の時(ドイツでは7年生)、

休憩時間中、学校の廊下で隣クラスの女子生徒達に取り囲まれて

「てっめえ、音楽なんかしやがって!」

という感じでジリジリと喧嘩を売られたんだって。

多勢に無勢で勝ち目はゼロ、

とにかくニコニコ微笑んで対応するしかない、

とご主人様は思ったんだって。

何を言われても、後ろへ押し倒されそうになても、

相手の目をしっかりと見て、微笑み続ける。

そして黙っていないで、

何の真似かとしっかりと向かい合って微笑みを絶やさないように頑張る。

ボコボコにされるかも知れないけど、

それしか思い付かなかったんだって。

でもそれが、効いたんだね。

その内、彼女達の中で一番大人しそうだった子が

「変なノ。笑ってやがる。」

と顔を気持ち悪そうにしかめて、

それで他の子達もやる気が失せたのか、

捨て台詞を残して散っていったんだって。

ご主人様は後で膝がガクガクしてたとさ。

でも、ご主人様がピアノを弾いている事を

何故、彼女達が知っていたのか、

そして、それが何故彼女達にとって怒るような事だったのかは解らない、

とご主人様は言っていた。

体育の時間の時だけ

隣クラスの女子とご主人様のクラスの女子が

一緒に指導を受けていただけで、

授業中にお喋りする機会もなかったし、

原因が全く解らないままだったそうだ。

でもね、ラッキーな事に、

取り囲まれていた一部始終を、どうも美術の先生が見ていたようなんだ。

う〜ん、そりゃそうだよな、

なんでその時に助けに出てくれなかったのか、って

ご主人様も後で知って、思ったそうだけどね。

とにかく、あの出来事の次の美術の授業の時に、

その男の先生が、

隣クラスの女子の仲間でご主人様と同じクラスだった子

(7年生になる時に、フランス語を取りたいからって、

ご主人様が理数系コースを選んだ折に

クラスの新編成で、その子だけが仲間と離れて

ご主人様と同じクラスになったって訳さ。

取り囲みグループの中で一番大人しそうだった子、

そうなんだ、「笑ってやがる」と、

ご主人様の事を気味悪がっていたあの子だよ。)

を自分のテーブルへと呼び出して、

「昨日のあの様は、いったいなんのつもりか」と、

何とご主人様の目の前で、クラスの前でお灸を据えたんだって。

正義って、少しは世の中にあるのかもね。

ご主人様は、びっくりさ。

その子は、と言うと、早々に進学コースを変更して、

仲間のいる隣クラスへと変わっていったようだ。

それからは、ご主人様に迫る事はなかったけど、

ギムナージウム(中学と高校が一つで、

将来大学を必須とする職業を目指す為の学校)の

廊下や階段ですれ違う度に、

毒を吐きつけられたようだけどね。

女の子の方がサッパリする事ができないのかなぁ。

女子ばかりの学校だったら本当に恐いだろうね、と

ご主人様は思うようになったとさ。

彼女がドイツで育ったお陰で、

多少の虐めに対しての抗体は出来たんじゃないのかな。

あちらでは、学校に

意地悪な連中(頭が本当の意味で悪いんだと思うよ)がいても、

その人間達によって同じ種族が尊い命を奪われる事件って、

聞いた記憶がないんだよ。

そして、例え虐められても、

「イジメにあってる」という意識にならないし、

学校へ行くのが嫌で恐くなるという風にならないのは、

一体何故なのだろうか?

喧嘩は解決にならないから無意味だけれども、

もしかしたら、

対処して前へ踏み出そうという

努力?強さ?習慣?考え?があるからなのだろうか。

ご主人様は、すぐには言わなかったけど、

後日、シュタードゥラー先生に学校での出来事を打ちあけて、

悔し涙を流したんだそうだ。

その時、先生はドイツの親として、

話をよく聞いて下さって、

最後に「人類の馬鹿のバクテリアに効く薬は未だ発明されていないからね・・・」

と一言。

そこで、ご主人様はハッとしたんだって。

もし、親代わりの先生がそこで

「まあ、可哀想に?、そんなに虐められて!酷い目に遭って!」

と仰っていたらば、

僕のご主人さまは、きっと

「自分は虐められているんだわ、自分は嫌われているんだわ。

被害者なの、傷付けられたの、ああ、自分は何て可哀想なのか」と、

一方的に相手の攻撃の矢が、

わざわざ心に刺さるような受け身の姿勢になっていただろうけど、

先生の一言で、馬鹿な相手が哀れに見えたのではないかな。

日本に住む人間も、そこから少し真似できる事は、ないのだろうか?

悲劇が起きなくて済むようになるのではないだろうか?

と、僕は犬なんだけど、そう思うんだ。

一人、一人が工夫すれば、内面的に強くなる事に繋がると思うんだ。

勿論、昔は、芯が強い人が日本でももっと多かったよ。

うん、それは分かっているし、実感しているよ。

だって、70代、80代以上の方達を見れば、よく解るもんね。

こういった健康にいい体験は、

ご主人様にとって、信念を貫く事に繋がる貴重な事だったんだ。

そう、信念を貫く、守り通す事は、

例え自分が世界で一人ぼっちになって、

大勢に後ろ指を差されても恐くない、

という勇敢さを必要とするからね。

以前の僕の「ひとりごと」でも論じた

「勇気」と「勇敢さ」との違い、あれを思い出してみてね。

大勢の人が自分とは違う意見だから、

自分もそれに合せて恙無く過ごす、という方が楽だろうけど、

自分を騙して押し殺す事になるね。

そうだよ、ご主人様にとっては、

アンナ・シュタードゥラー先生から受け継いだ

「ベアタ・ツィーグラーの魂の耳で聴き、奏でる自然なピアノ奏法」

を正しく守り、正しく実践し、正しく伝えていく事が信念なのさ。

その信念を貫く為にはそうとうな覚悟が要るからね。

ミュンヘンの親友達は、

僕のご主人様を「ドイツ人」と見てくれていても、

やっぱり他の人にとっては彼女の見た目はドイツ人でもないし、

ヨーロッパ人でも白人でもなくて、

どう転ぼうと外国人にしか見えないんだよね。

アジア人。

黄色人種。

自分自身をドイツ人に感じていても、外見が邪魔をする。

そういう中で大きくなってきたからね、彼女は。

だからなのか解らないけど、

外見に関係するファッションとか髪型の流行廃りに、

彼女は確かにあまり流されないんだけど。

流されないと言うべきか、無関心とも言えるのか、

犬の僕には論じる興味がない話だけどさ。

ま、いろいろと経験していく内に、

言葉で相手の攻撃をかわす、という西洋的な対処方を

少しづつ身に付けていくわけなんだよな。

そう、攻撃をかわす、という所がポイントなんだ。

まともに受けてたら、又攻撃を仕掛け返すだけの

野暮な堂々回りになるだろう?

だから、ほら、日本でだって昔から言うでしょう、

「のれんに腕押し」って。

今の日本人は忘れかけているようだけどね。

例えばだけど、

廊下(会社、学校、その他の建物)や道で

すれ違いざまに卑劣としか言い様がない言葉の暴力が飛んできたら、

カァーっとなってガーガー言い返すんじゃなくてネ、

「あ〜ら、今日はお具合が悪いんですか?」

と静かに問いかける。

相手は頭に血が昇って

茹でダコ(茹でた後の「海老赤色」、とドイツ語では言うんだよ)

色に顔は染まり、恥をかいたと

内心悔しがりながらスタコラサッサと立ち去るか、

もっといいのは、

優しく問いかけたらそのままこちらが立ち去り、

変な相手をその場に取り残せばいいんだよ。

相手にしない、

そして究極の皮肉を込めた親切な同情を示したまでだからね。

相手から言葉の槍が飛んできたら、

それは自分に対する個人的攻撃ではなくて、

その相手が今、別の事で悩みを抱えていて苦しいから吠えているのだ、

一種の発作を起こしていて自分じゃなくなっているんだ、

と「気の毒」に思う、という事なんだよ。

そりゃそうだよ、

そう思う事は簡単ではないよな。

少しづつトレーニングしていく事、それだけ。

そういう人生のトレーニングが

結果的には本当の「ユーモア」に繋がるんだよ。

僕のご主人様が、生きている間にそこに行きつけるかどうか、

かなり不明だな。

本当のユーモアってね、

「ユーモア。それは、それでも笑う事」とは、

ドイツ人は良く言ったもんだね。

日本人の多くは、すぐ「絶交」だの、「無礼討ち」だの、

「逆恨み」だの「無視」だの「村八分」って、

いっそがしいこっちゃ、全くのう。

ハァ〜。

ご主人様の夢の一つは、極端な話、こりゃホントにひどいやっ、

て言えるような目に遭っても、

「それでも笑う事」ができるような人間になる事だそうだよ。

やれやれ、そんなの、寿命が千年あっても、彼女には無理だと思うけど〜。

志しは嵩く持て、と僕は慰めてあげるしかないよね。

さ、まだまだ検証する事柄がいっぱい残っているから、

謎解きの旅を続けるね。

そして、折々に、僕のすんばらし〜い「ひとりごと」を

旅先から皆さんに送るからね?。

そうだよ、楽しみにしていてね!

ご主人様が、僕がいないと寂しいんじゃないかって?

へへっ、そいつぁーどーも、心配してくれてありがとさんです。

僕が思うには、彼女も大人にならなきゃだめなんだから、

たまに僕が出掛けていても

「せーぜー、しっかりやっとくれー 」が、

僕の教育方針・・・だったりして。

そうそう、

「究極のユーモアを身に付け、

自らの事を楽しく笑ってのける事が出来た時、

大人になったと言えようぞ!」というのが、

僕がご主人様に贈るアドヴァイスだね。

ハッハッハッ。

では! 

ブロロロロロロオォーン・・・・ブロッ、ブブ、プスン。

(こりゃまいった、エンストかい?)エヘヘ、

取りあえず彷徨(さまよ)い続ける事にしたウイちゃんより。